花形演芸会スペシャル 大賞の武春、巧みに雲月節

                  1999.06.29 読売新聞夕刊


 国立演芸場で毎月開かれている花形演芸会は、出演した若手に、年一回
賞を与えている。一九九八年度の受賞者は、大賞が浪曲の国本、金賞が上
方落語の桂文我と落語の春風亭昇太、銅賞が落語の林家たい平とボーイズ
のポカスカジャンであった。

 その受賞者が全員出演し、改めて芸を兢ったスペシャル会を聴く。選ば
れた者ばかりだけに、充実した芸で会場は盛り上がる。中で一番の出来は、
やはり大賞の武春だった。
 演題は、「佐倉義民伝」のうち「甚兵衛の渡し」。江戸へ直訴に行った
佐倉宗五郎が、処刑される前に妻子に会いたいと、忍んで故郷へ帰って来
る。印旛沼の渡し守甚兵衝船を出してほしいと頼むが、厳戒中で船は鎖
で封印されており、甚兵衝は船を出せない。仕方なく帰ろうとする宗五郎。
恩を受けている甚兵衛は、決死の覚悟で鎖を断ち切り、宗五郎を渡す。

 昔から多<の演者が得意にしてきた義理人情の物語で、武春は先年亡く
なった四代目天中軒雲月の型で演じた。雲月節は、いきなり高音から始まる
など、難しいところが多い。武春はそれを、前半は立体感のある語りを多
用し最後は熱のこもった節で盛り上げた。甚兵衝の苦悩が、見事に描かれ る。
 武春は雲月節のほか、いろいろな節を巧みにこなす一方で、三味線ロッ
クなどを手がけて、浪曲ファンの若返りを目指して奮闘している。その成
果は実りつつあるが、さらに注文をつければ、受賞を機会に古典でも「武春
節」を編み出してほしい。
                 演芸評論家・保田武宏
                     十二日、国立演芸場

撮影 © 森 幸一


受賞歴
■ 1989年(平成元年)12月第41回 国立演芸場 花形演芸会 銀賞 「五稜郭」
■ 1993年(平成5年)9月第56回 国立演芸場 花形演芸会 銀賞 「瞼の母」
■ 1995年(平成7年)平成7年度 第50回 文化庁芸術祭 [演芸部門] 新人賞
■ 1996年(平成8年)3月平成7年度 第12回 浅草芸能大賞 新人賞
■ 1997年(平成9年)6月平成8年度 国立演芸場 花形演芸大賞 銀賞
■ 1999年(平成11年)平成10年度 国立演芸場 花形演芸大賞 大賞
■ 2000年(平成12年)平成11年度 第50回 芸術選奨 [大衆芸術部門] 文部大臣新人賞


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です