国本武春 ベンベン旅日記(7) 二楽さんの独演会

本日の国本、うなる代わりに旅日記とまいりましょう あがった あがった 〜2001.11

 私の友人で「紙きり」の林家二楽さん。・ 「紙きり」と言う芸は演芸好きの方なら誰でも知っていると思うが、お客さんから注文をとりその場でハサミを使って紙を切り抜き、見事その注文どおりの形に仕上げると言う、 寄席芸の中でも特に技術とセンスを要求される芸である。

 その二楽さん、ある日北海道の仕事で飛行機に乗ろうと搭乗手続きを済ませ、 手荷物検査の機械に荷物を通すと、 「ピーッ」。 物騒な世の中になり今特にきびしくなっている手荷物検査であるが、 二楽さんの場合はブザーが鳴るのも当然。 カバンの中には仕事に使うよく切れそうなハサミがゴロゴロ入っていた。

  「あの、お客様、このハサミは・・・?」 「えっ?あ~、あの~、実はアタシ紙きりなもんですから、 予備のハサミがたくさん入ってるんですよ。」 「何ですか、紙きりって?」 「えっ?、何ですかって、あの~寄席で落語家さん達の間に出てきて、 お客さんのご注文どおりの形に紙を切る芸ですよ。」 「えっ?・・寄席って?」 「え~っ、寄席知らないのー。参っちゃったな~・・じゃあ 今ここで一枚切ってみますから。」 仕方なくそう言うと二楽さん、バッグからハサミと紙を取り出し 体を揺らしながら得意の形を切り始める。 するとその様子に気付いた回りの人たち。ひとり集まり二人集まり、 あっという間に大勢の人垣ができた。

  それにも気付かず夢中になって切っていた二楽さん、 切り終えると高座の時と同じように後ろが黒くなっているケースにはさんで、 「はい、できました。」 集まっていた人たち、それを見て 「うわ~っ!すご~い!」 もの凄い拍手の嵐。そればかりか、 「私も切って」「こっちにも切って」 とあちらこちらから注文が出る始末。 思わぬ場所で二楽さん、すっかり独演会を開いてしまった。  〜♫ベンベン 


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