国本武春 ベンベン旅日記(11) ホーミーは身を助ける

本日の国本、うなる代わりに旅日記とまいりましょう あがった あがった  〜2001.12

 モンゴル地方に伝わる芸で「ホーミー」と言うものがある。 我が浪曲のようにただ大きくてよい声を出せば良いと言うのではない。 声を出したとき、その声の中に含まれている倍音の要素を増幅させ、最終的には地声と倍音の二つの声を同時に出す。

 以前テレビで、あのユーミンの声が「ホーミー」に似ているので、実際モンゴルに行ってホーミーの名人と競演してみようという企画があったが、それはそれはその名人の芸は見事なものであった。 しかし聴いたことの無い人はどんな音になるのか創造もつかないであろうからチョット説明すると、丁度モンゴルの大草原にさわやかな風が吹いており、そこに天から鳴き声の美しい鳥が舞い降りてきて切れ目なくさえずっている様な音とでも言おうか・・・えっ、余計わかりにくい?  まあとにかく、うまくなればそうなるのだが、そうでないまだ未熟なうちはただ声の大きい間抜けなお経みたいなもの。

 私が日ごろお世話になっているUさんは、そのホーミーの 魅力に取り付かれた人。日夜練習と研究に余念が無い。 声の響きそうなところを見つければ 「ハ~~・・」 一杯飲んで気分がよくなれば、 「ハ~~・・」 まだ勉強中のUさんのホーミーは、どう贔屓目に聴いてもヤケクソのお経にしか聞こえない。

 そんなUさん、ある日満員電車に揺られ駅に着いたのだが、 混んでいるためなかなか降りる事ができない。そこでUさん、 ここぞとばかり得意のホーミーで 「ハ~~・・」 すると突然ドア付近にたまっていたお客さんがサ~ッとよけて、なんとUさん悠々と電車から降りる事ができた。  これで味をしめたUさん、人ごみに揉まれて苦しいとき、 長い列に並んで待ちきれなくなった時、何かにつけピンチになると自慢のホーミーで 「は~~・・・」 それで数々の困難を乗り越えたと言う、まさに『ホーミー は身を助ける』と言う一席でございました。  〜♫ベンベン


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