国本武春 ベンベン旅日記(6) 普通にやっときゃよかった

本日の国本、うなる代わりに旅日記とまいりましょう あがった あがった 〜2001.11

 十五年ほど前、ニューヨークで浪曲をうなった。 前衛ジャズのミュージシャン、ジョン・ゾーンのプロデュースで、 日本のアーティストを集めた「若者」と言うタイトルの ジャパニーズフェスティバルがニューヨークのライブハウスで一週間催された。

 矢野顕子さん、近藤等則さんなどのそうそうたるメンバーの中に、 浪曲の私や津軽三味線の佐藤通 弘さんなども加わり、 前衛から古典までそれぞれの分野で活躍する 日本の若手ミュージシャンによる音楽フェスティバルである。

 そんなイベントに参加できる事は大変光栄な事なのだが、 正直言って実はちょっと困った。 日本でやったって馴染みがなくわかりにくいと思われている浪曲を、 どうやったら外国人に、しかも世界中の若者が集まるニューヨークで楽しんでもらえるか・・ もとより英語はさっぱりの私、なんとか言葉の壁を越えなければと頭をひねった。その結果 、 * どうせ日本人だって歌詞を理解して英語の歌を聞いているわけじゃなし、 大切なのはフィーリングである。 * わからないんだったら、日本でやるときのように地味な話をだらだらやるのではなく、 有名な話を次々とオーバーに演じるべきだ。と言う考えに達した。 そこで演じたのが・・国定忠治、森の石松、清水の次郎長、 大石内蔵助、石川五右衛門から水戸黄門など 日本の時代劇のヒーロー達が 次々とニューヨークに渡りひと暴れすると言うハチャメチャなお話し。

 声をふりしぼり、これでもかこれでもかと派手に演じ、 無事に終わって舞台を降りると、 「いや~、ずいぶん変わった浪曲でしたね~。」 と声をかけてくれたのが年配の日本人。 アレ?日本人も居たのか。こりゃまいったな~・・・ そう思いながら明るくなった客席を見て驚いた。 ひとりだけじゃない。なんとほとんどが日本人。 「なんだよ、おい・・それじゃ普通 にやっときゃよかった。」 慣れない外国で気を使ったばかりに、 なんとも不思議な浪曲をやってしまったと言う、国本武春ニューヨーク公演のお粗末。 〜♫ベンベン


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