師匠: 東家幸楽

入門: 1981年(昭和56年)


 ウチの師匠は東家幸楽って言って、垢抜けた人というか、偉い人だった。  

師匠(東家幸楽)と


  ま、私がどんな浪曲をやってるかなんて、見に来ないから知らなかったんだけど。「お前、今、なにやってんだ」「ロックで浪曲やってるんですよ」「おう、ロックか、昔ロックは流行ってたんだよな」って、浅草のロック座と勘違いしてた。

 そうしたら、師匠が87歳の時に「一度見に行くから」と言われてしまった。どうせ忘れるだろうと思って放っておいたら、私に黙って、渋谷のエッグマンのライブに来てしまった。ところが、エッグマンは地下のライブハウスなので、師匠は場所が分からなかったらしく、「そういうのをやるんだったら、ノボリでも立てなきゃ」と言われてしまった。

 そして私のライブを見た師匠は、変なことで誉めてくれた。「アンタは大したものだ。親戚 でもないのに、客が立ち上がってくれる。ああいうのは、戦前に東家ラクエン先生が、乃木将軍の『おい、コラコラ』という台詞を言って、客が気を付けをした時以来だ」だって。要するに、伝統にはこだわらず、お客さんが来て喜んでくれていることを評価してくれたんだけど。
 いくら柔和な師匠でも、腹にいろいろあるんじゃないかと思って聞いた時も、「いいんだいいんだ、もっとやれ」と応援された。結局、昔の浪曲は、探偵モノで「悪漢待て~」と追い掛けながら舞台から引っ込む人とか、下から手品の道具を出す人とか、いろんな人が居たらしい。ところが最近はすっかり偉ぶって、同じ事しかやらない。その現状を憂いていた人だった。

 キーボードのアキラくんと(上野東照宮参集殿、平成5年頃) © 森 幸一 



受賞歴
■ 1989年(平成元年)12月第41回 国立演芸場 花形演芸会 銀賞 「五稜郭」
■ 1993年(平成5年)9月第56回 国立演芸場 花形演芸会 銀賞 「瞼の母」
■ 1995年(平成7年)平成7年度 第50回 文化庁芸術祭 [演芸部門] 新人賞
■ 1996年(平成8年)3月平成7年度 第12回 浅草芸能大賞 新人賞
■ 1997年(平成9年)6月平成8年度 国立演芸場 花形演芸大賞 銀賞
■ 1999年(平成11年)平成10年度 国立演芸場 花形演芸大賞 大賞
■ 2000年(平成12年)平成11年度 第50回 芸術選奨 [大衆芸術部門] 文部大臣新人賞


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です