木馬亭忠臣蔵・春

           1999.3.28 朝日新聞夕刊

 ケレンの利いた福太郎の節 「浪曲はどうも」という人にも、こんな企画なら親しみが持てるかもしれない。

 「本馬亭忠臣蔵」と銘打ち、一年間かけて発端から討ち入りまで、浪曲を中心に、 落語、講談、コント、人形芝居まで動員して 描いてゆこうという試み。「仮名手本忠臣蔵」、義士銘々伝、外伝などなど、忠臣蔵のことなら何でもありの自由さが若い人にも支持されたらしい。立ち見の出る盛況だった 。
 「木馬亭忠臣蔵・春」(14日、東京・浅草の木馬亭)は、その「赤穂城明け渡し」まで。芝居の「仮名手本」で言えぱ「四段目」。まず、浪曲の玉川福太郎が、新作「忠臣蔵の幕が開く」で、歌舞伎「仮名手本」の 「大序」がほかの芝居の形式とは大いに異なる点を軽い節で解説し、全体のリードの役割を果たした。

 福大郎は、その後の 「殿中刃傷後日談--不破数石衛門の芝居見物」にも上がり、得意のケレン昧を披露した。浅野内匠頭田腹後、重臣の不破が芝居を見ながら懐かしむ場。ネタ下ろしの新作である大序と違い、こちらは手慣れた語り口。メリハリの利いた節とたんか(会話)は、福太郎の十八番で、客席の笑いを引っ張り出した。浪曲には「涙」しかないと 思いこんでいる人にはぜひ、福太郎の芸を聞いて欲しい。笑えます。


 photo © 森 幸一

 その前の国本武春が圧巻だった。「大石内蔵助山鹿護送」と三味線ロック・バラードによる「刃傷から田村邸訣別・内匠頭切腹」。少年時代の内蔵助の異才ぶりを本寸法の節で聞かせた後、ロック調に変えた三味線で客席を丸ごと巻き込んで、一時間の熱演だった。

 四段目を題材にした落語「淀五郎」の三遊享鳳楽は、やや気合不足だったのが残念。講談の重鎮・宝井馬琴の「梶川与惣兵衛」、二代目東家浦太郎の「城明け渡し-‐石衛門七紅梅」。共に練達の話芸で貫録を示した。(太田博)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です